ディジョンのパン・デピスPain d'Epices de Dijon

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パン・デピスとは香辛料入りパンのことです。英語ではジンジャーブレッド。発酵生地にハチミツ、スパイス、時にはフルーツの砂糖漬けを加えて焼いたお菓子です。ハチミツの代わりに他の甘味料を入れ、保存がきくようにしたものもあります。形は、たいていはパウンド型ですが、その他にノネット(若い修道女の意)という直径5 cm、厚さ3cm位のパサパサしたもの、ジャンブレットという、丸または長方形の薄いクッキー状のもの、グラッセ・マンスという棒状で白く砂糖がけしたものなどがあります。

起源は10世紀頃中国で作られていた小麦粉とハチミツを使ったお菓子「ミ・コン」だといわれています。このお菓子を13世紀に中国と戦ったモンゴルのチンギス・ハンが持ち帰ったという逸話があります。これがアラブに伝わり、11世紀に十字軍によってヨーロッパにもたらされました。当時はハンガリー、ドイツ、オランダ、ベルギーなど東欧を中心に食べられていたようですが、1369年に北フランスのフランドル地方のマルグレット王女がブルゴーニュ公国のフィリップ3世に嫁いだため、ディジョンでも作られるようになったといいます。(このフィリップ3世が、フランドル地方遠征中にこのパンを見つけ持ち帰ったという説もありますが。)当時のオランダには異国の香辛料があふれ、様々な料理に使うのが一種の流行だったようで、このパンもその1つであったのだと思われます。

フランスでは今でもランスとディジョンのパン・デピスが有名で、ランスに設立したパン・デピスの同業組合は、1596年フランス国王アンリ4世によって公式に承認されています。ランスでは材料にライ麦が用いられ、その製造の独占権を主張していましたが、17世紀以来フランス各地の祭りで売られるようになります。現在ディジョンのものは小麦粉のみで、南仏産ラベンダーのハチミツを使うことが多いですが、ベルギー(フランドル)風としてライ麦を加えることもあります。

小麦粉、ライ麦粉、ベーキングパウダー(または重曹)に、温めたハチミツを混ぜ、牛乳、卵、砂糖を加え、シナモン、クローヴ、生姜、アニス、ナツメグなどのスパイスを入れ、オレンジ・ピールやレモン・ピールなどを混ぜて、しばらく寝かせ、パウンド型で低温で1時間位焼きます。仕上げにグラサージュ(砂糖で作るつや出し用の上がけ)を塗ります。
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# by courgette | 2010-08-11 10:48 | ブルゴーニュ

ピティヴィエPithiviers

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ピティヴィエは、オルレアネ地方の小さな町ピティヴィエ発祥の、アーモンドクリームの入った花びらの形のパイ。この町では公現祭にガレット・デ・ロワの代わりにこのケーキを食べるそうです。現地ののお菓子屋さんでピティヴィエとガレット・デ・ロワとの違いを聞いたら、「同じよ。ガレット・デ・ロワの方が、アーモンドクリームを多めに入れるわね。」とのこと。また、砂糖漬けフルーツを詰め、フォンダンでおおった同名のパイもあります。仔牛の胸腺肉と鶏のレバーと腎臓を詰めた調理パイにもこの名をつけます。

『基礎フランス菓子教本(TRAITE DE PATISSERIE ARTISANALE)』によると、フランス王シャルル9世(1550生~74没)がピティヴィエの近くでユグノー派の強盗団に捕えられたとき、捕虜が王だとわかると、彼らはあるパテを王に食べさせました。そのパテがおいしかったので、釈放された王は彼らに恩赦を与え、ピティヴィエの菓子職人の1人に王家御用達の特権を与えました。この職人は自分の作るパテにシャルル9世の馬車の車輪を真似た筋をつけた。これがピティヴィエの起源であるといわれます。

現地では、いわゆるピティヴィエはピティヴィエ・フィユテと呼ばれていて、折りパイ生地にアーモンドクリームを挟んで焼いたもの。もう1つはピティヴィエ・フォンダンと呼ばれていて、アーモンドケーキに白いフォンダンがけしたもの。上にフルーツの砂糖漬けを飾っています。フォンダンの方が歴史が古く、フィユテの方は13世紀から作られているとのことです。
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# by courgette | 2007-01-06 11:47 | サントル

エピファニー


1月6日はエピファニー(公現節)です。「エピファニー」は、ギリシャ語の「Epiphaneia」からできた言葉で、「出現」を意味しています。東方の三賢者が流れ星に導かれベツレヘムに到着し、馬小屋のわらの中に寝かされていたイエスの誕生を確認したのが1月6日で、この異教徒世界の人間が、異教徒世界にキリストの誕生を知らしめたということで、エピファニー=出現とされます。三賢者とはエチオピアのカスパール、アラビアのメルキオール、カルデアのバルターザルで、それぞれ黄金、乳香、没薬の贈り物を持っていたといいます。現在では人が集まりにくいということもあって、1月の最初の日曜日がエピファニーとなっています。

この日に食べるお菓子がガレット・デ・ロワ(王様のガレット)です。このガレット・デ・ロワは一般的には折りパイ生地の間に、アーモンドクリームをはさんで焼き上げた、たいへんシンプルなお菓子です。地方によってはブリオッシュ生地などを丸く焼いたものなどもありますが、必ず紙などで出来た王冠がつき、フェーブが入っています。

ガレット・デ・ロワを囲んで新年のはじめに親しい人たちが集まり、切り分けて自分の一切れの中にフェーブが入っていたら、そのパーティーの席で王様や女王様になり、パートナーを選んで2人でシャンパンで祝福を受け、その一年は幸運に恵まれるといわれます。フェーブとは本来はそら豆の意味ですが、キリストの誕生にちなみ、マリア様の像や、布にくるまれた生まれたばかりのキリストや、馬小屋で生まれたので、馬の蹄鉄の形の陶器などが使われるようになり、現在では、素材も形も様々になっています。

ガレット・デ・ロワは、987年のフランク王ユーグ・カペーに始まるカペー王朝の頃から食べられていたようです。その昔は、パンの中にフェーブを隠し、くじ引きに使われていましたが、そのうちにお菓子の中に隠すようになり、結婚式や洗礼のパーティーで王を決めるのに使われたようです。中世以降、エピファニーは各地に広まり、各家庭で「ガトー・デ・ロワ」(王様のお菓子)が作られるようになりました。現在ではフィユタージュ(折りパイ生地)が使われますが、この生地が使われ始めたのは十字軍の時代からです。ある歴史書によれば、フィユタージュは1453年にオスマンの精油を使って作られ、トルコで発達し、ペルシャで「Bourreck」としてずっと使われていたといわれています。その製法がトルコの料理人によって、ルイ13世、14世の時代にフランスに入ってきたとされています。また18世紀の初めには、それまでお菓子屋のみが作っていたガトー・デ・ロワの製造権をパン屋にも与えろという紛争が起こり、当時の高等法院で争われたこともありました。革命の後にはこのお菓子を、王様のお菓子ではなく平等のお菓子と呼んでいたこともあったそうです。
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# by courgette | 2007-01-06 11:38

ガトー・ア・ラ・ブロッシュGâteau à la Broche

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ガトー・ア・ラ・ブロッシュは、ルエルグ、ガスコーニュ地方の銘菓で、ワイルドなバームクーヘンのようなものです。生地はカトル・カール(小麦粉、砂糖、バター、卵を同量用いるケーキ)。かつて家庭の暖炉に円錐形の型をつけた棒をかざして、少しずつ生地をつけて、回しながら焼いていたそうです。「ガトー・ピレネーGâteau Pyrénées」とも呼ばれます。ブロッシュとは串刺しの意味です。

このお菓子の由来についてはいくつかの説があります。ピレネーの山奥の羊飼いの家に住みついたオーストリア女性が、ジャガイモのピュレでこのお菓子の前身を作っていたとか、ナポレオンがバルカンから持ち帰ったとか、ピレネーのナポレオン部隊が18世紀に東欧の国から作り方を学んだとか。

スーパーで既製品を見かけますが、今では手作りしているところはほとんどなく、私たちもピレネーの山奥リュツ・サン・ソヴールLuz St. SauveurのシアSia村まで探し求めました。夏の間しか焼かないというその工房「Gâteau A La Broche de Sia:ガドー・ア・ラ・ブロッシュ・ド・シア」は、ロッジもあり、バケーションで滞在する人もいるようでした。小屋の中では交代で、暖炉でガトー・ピレネーを焼いています。中はかなり暑いです。1982年よりここで作っているよとのことです。

決まり事として、つげの木で焼く。レモン、オレンジのコンポートや、バニラ、アーモンドパウダーで香りづけする。菩提樹で燻す。といったことがあると看板に書かれていました。高さは30センチ弱で角のある岩のようです。1ヶ月くらい保存できるそうです。外のテラスでシードルと共に試食したのですが、外側はこげ目が香ばしく、内側はとてもしっとりしていておいしかったです。
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# by courgette | 2006-12-14 10:38 | ミディ・ピレネー

クルスタッド・オー・ポムCroustade aux Pommes

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クルスタッド・オー・ポムは、紙のように薄く伸ばした生地に、アーモンドクリーム、リンゴを入れて焼く西南地方の名物です。ジエール県オーシュが発祥といわれていますが、スペインに住んでいたアラブ人が伝えたという説もあります。当初はバターの代わりにガチョウの脂を使っていたようです。香りづけに特産のアルマニャックを使います。

クルスタッドの語源はプロヴァンス語crousto「殻、皮」から派生したcroustado。「パスティス」、「トゥルティエール」とも呼ばれます。現地ジモンのお菓子屋さん「ミディ・ピレネー・パティスリー」では、「パスティス・ガスコンPastis Gascon」と呼んでいました。

このお菓子は食べるとはらはらとくずれるような生地がポイントです。訪れたこちらのお菓子屋さんでこの生地を作れるのは担当のおばちゃまただ一人のようで、それはそれは見事にテーブルいっぱいに生地を広げてくれました。

一般的にパスティスPastisというと、南西フランス各地方にあるパイ菓子の1つをさすようです。ラテン語pasticius「パイ包みの料理または菓子(パテ)」が語源です。8世紀にスペインから侵入し、この地方を一時占領していたサラセン人がもたらしたといわれます。

ただ、ミディ・ピレネー地方では、伝統的なブリオッシュ型で焼いたバターケーキのことをさすことが多いようです。これはガトー・ピレネーGâteau Pyrénéesともトゥルトー・デ・ピレネーTourtre des Pyrénéesとも呼ばれます。

お菓子の名前は地方によってちがうので、混乱してしまいます。
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# by courgette | 2006-12-07 11:02 | ミディ・ピレネー

ファー・ブルトンFar Breton

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ブルターニュの地方菓子第3弾はファー・ブルトンです。これは、卵、砂糖、小麦粉、牛乳を合わせ、果物を並べた型に流して焼いたもの。もちっとした舌ざわりが特徴です。

名前の由来は、ファーという布にクレープ生地の濃厚なものを包んで焼いていたものが始まりという説と、ブルターニュでファーといえば小麦粉やそば粉で作る塩味、甘味の粥、団子のことで、ラテン語のfar(小麦)が語源だという説があります。

大き目の型のまま売られていることと、小ぶりに作って型から出して売られていることがあります。本来は干しプラムを入れるのですが、西部では干しレーズンを入れることもあるようです。また、南下するほど生地はゆるくなり、型に練りパイ生地をしいて、フランのように作られることも多いそうです。
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# by courgette | 2006-11-27 20:00 | ブルターニュ

ガレット・ブルトンヌGalette Bretonne

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ブルターニュ地方菓子続いては、ガレット・ブルトンヌです。これはバター、砂糖、小麦粉、卵で作るサクっとした食感の厚いビスケットです。ガレットとは平たい円形のお菓子のこと。

現在では工場生産もされ、全国的に有名な地方菓子の1つです。イギリスのショートブレッドの流れを汲むともいわれています。有塩バターを使うことが多いようです。直径20cm位の大きなタルト型で焼かれたものと、5~6cmのセルクルで焼かれたものがあります。より小さくて薄いのがパレ・ブルトンです。
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# by courgette | 2006-11-26 19:47 | ブルターニュ

クイニー・アマンKouign Amann

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ブルターニュといえばそば粉のガレットやクレープを思い浮かべる方も多いかと思いますが、私が思うブルターニュの3大地方菓子は、クイニー・アマン、ガレット・ブルトンヌ、ファー・ブルトンです。

さてこのクイニー・アマンですが、ブルトン語で「クイニー」はお菓子、「アマン」はバターのこと。つまりブルターニュ名物の有塩バターのお菓子です。今に伝わるブルターニュのお菓子の中でも1番古いものだといわれています。プロポーズするとき、男性が女性の家に贈ったともいわれています。19世紀、この地方でも最果てのドゥアルヌネという土地が発祥地のようです。

当初はシンプルなパン生地だったようですが、時代を経るにしたがって、バターの香りいっぱいのお菓子になったといいます。このお菓子の誕生にまつわるこんな話も伝わっています。

「ある日パン屋のおかみさんがパン種の上にバターの塊をおきっぱなしにしてしまった。生地にバターがしみこんでしまい、そのままでは売り物にならないが、もったいないので、焼いてみたらとてもおいしかった」。

有名なお菓子は失敗から生まれることがほんとうに多いです。

作り方は、イースト、水、小麦粉で作ったデトランプ(基礎となる生地)を発酵させ、砂糖と有塩バターをパイのように折り込んでオーヴンで焼きます。店によってパイのようにサクサクだったり、パンのように弾力があったりするのがおもしろいです。
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# by courgette | 2006-11-25 19:35 | ブルターニュ

カヌレ・ド・ボルドーCanelés de Bordeaux

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今日はカヌレです。カヌレは赤ワインで有名なボルドー地方の修道院で作られていた伝統菓子です。日本でも一時大流行しましたね。

カヌレとはうね模様のことです。小さな王冠型で、外皮は焦げ茶色でカリッとし、中は卵色でねちっとした食感が特徴。バニラ風味のクレープ生地をカヌレ型に流して、高温で焼き上げます。

1789年のフランス革命で修道女達が追われ、誰も作る人がいなくなりましたが、1830年頃再び作られるようになったそうです。当時のカヌレは小麦粉の代わりにとうもろこしの粉が使われ、型は青銅製で蒸し焼きしたらしいです。現在の銅製の型を使い始めたのはそれ以降で、職人達の提案だったといいます。ボルドーにはカヌレ協会があり、この伝統のお菓子を守り続けています。カヌレの原形はイギリスのマフィンだという説もあります。

私が訪れたのは「Antoine:アントワーヌ」というカヌレ・ド・ボルドーが一番おいしいと言われている店です。焼き立てを試食させてもらったら、まさに外はパリっ、中はしっとり。焼き立てはとてもおいしい。今まで地方をまわってきたが、地方菓子は作り立てを味わうことのできた所のものが最もおいしいと感じるようです。職人さんの気持ちもダイレクトに伝わるからでしょうか。

●材料:
牛乳       1000ml
砂糖        500g
薄力粉       250g
卵黄          6個
全卵          1個
バター        50g
ラム         10ml
(バニラ好みで適量)

●作り方:
①砂糖と薄力粉を合わせる。
②卵黄、全卵を合わせる。
③85℃に温めた牛乳を加える。
④溶かして粗熱をとったバターを加え、冷蔵庫で生地を一晩休ませる。
⑤焼成前に、香りづけのラムを加え、蜜ろう(みつばちの巣の主成分、なければバターでもよい)を塗った型に流して、220℃のオーブンで45分から1時間焼成する。

ワインを清澄化するために卵白を使うので、残った卵黄をカヌレにしたとかしないとかいう話もあります。
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# by courgette | 2006-11-16 16:14 | アキテーヌ

リムーザン風クラフティ Clafoutis Limousin

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今日はクラフティです。ビストロのデザートの定番ですね。もともとはリムーザン地方発祥の、サクランボ(ブラックチェリー)を入れたパンケーキです。語源は同地方の語clafir「つけ加える」。

作り方は、小麦粉、卵、砂糖、塩少々を混ぜ合わせ、牛乳で溶いてクレープと同じ生地を作る。タルト型にバターを塗り、軸をとったサクランボを並べ、生地を流し込んでオーヴンで焼く。熱いうちに粉砂糖をふりかけて食べます。外側に練りパイ生地をつけることもあります。

リムーザン地方のクラフティこそ唯一本物のクラフティといわれ、その起源はリモージュと近郊で古くから作られていた「フォニャルダ」というお菓子とされています。また、使用するサクランボはこの地方のコレーズ県のものでなければいけません。なので、本物はサクランボの季節に行かないと食べられません。

私が訪れたのはリモージュ焼で有名なリモージュ。リムーザン地方の中心地です。季節外れだったのですが、電話して探してありましたよ。クラフティ。煮たサクランボを使ったものですが、ちゃんと種も入っていて感動しきりでした。うーん。でもフレッシュなサクランボのクラフティが食べたい!
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# by courgette | 2006-11-14 10:21 | リムーザン